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基地報道:沖縄県紙について思うこと

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基地報道

沖縄県紙について思うこと

 今回は沖縄の県紙について、思うところを書いてみました。本来は別のブログのために用意したのですが、個人的な意見が強くなったため、こちらでの掲載に発表の場を変えました。以下、「だ・である調」となっています;

「琉球新報」、「沖縄タイムス」の沖縄県紙2紙では、1面を飾るトップニュースが米軍の基地問題関連のニュースとなることが極めて多い。県民の読者ニーズを反映した編集方針であると言えるだろう。全国を見渡せば、全国紙と大きく変わらない記事が紙面を埋め尽くしている県紙や地域紙は多い。だが、多くの紙面が独自取材の記事によって構成されている沖縄の県紙は、全国的に見ても稀有で貴重な存在である。昨年10月下旬に大阪府警の機動隊による反対派活動家への「土人」発言があり、同じく昨年12月には名護市東海岸近くへのオスプレイ墜落事故がつづいて、どちらも大きく報道された。昨年7月からは高江のヘリパッド工事がすすんでおり、辺野古のキャンプ・シュワブ周辺では反対派と防衛省沖縄防衛局とのにらみ合いも継続している。

例えば今日(1月17日)付の「沖縄タイムス」1面トップの記事は、「米軍艦、海に汚水 うるま 15万リットル超投棄 15年 トイレや医務室からか」である。これは約2年前の2015年1月27日に、米海軍の強襲揚陸艦が、うるま市にある原潜も寄港可能な軍港ホワイトビーチに接岸中、15万1416リットルの雑排水を海に投棄していた、という内容である。2年も前の出来事なので速報性は無いが、同紙が情報公開請求により独自入手した内部情報をすっぱ抜いた記事として、トップニュースとなっている。正直に言えば私は、「米軍基地についてのネガティブな情報に対して、県紙の論調ほどには飢餓感が希薄である」と告白しなくてはならない。その理由はおそらく、県内でマジョリティーとなる(であろうと想像する)県紙読者ほどには、米軍基地に対して強い怒りの感情を抱いていないため、なのだろうと自己分析している。沖縄について米軍基地以外にも知りたいテーマはたくさんあるし、米軍についてであっても、否定的な情報だけでなく、もう少し冷静で多角的な情報も知りたいと思う。例えば同日付3面には、「軍属」の範囲を明確化した補足の地位協定に外相と駐日米大使が署名した記事がある。その主見出しは、「定義不明 効果は不明」と否定的だ。解説部分の小見出しは「問題を矮小化した弥縫策」とある。本当にネガティブな内容だけしか盛り込まれていない地位協定の補足だったのか、疑問を抱く。

高江でのヘリパッド建設工事についての記事でも、そうだった。高江集落周辺で行われたヘリパッドの新設は、1996年12月の在沖米軍基地縮小に関して日米政府が合意した「SACO報告」に盛り込まれていた北部訓練場一部返還の交換条件である。北部訓練場約7500ヘクタールのうち約4000ヘクタールが返還された。この面積は、沖縄にある米軍の専用施設・区域の約2割に相当するという。県紙の論調では、日米軍事同盟の強化につながる、赤土の海への流出や新設されるヘリパッド予定地での森林伐採など自然破壊につながる、ヘリパッドに囲まれることになる高江集落に墜落事故の危険や騒音被害が集中する、新設されるヘリパッドはオスプレイの発着を前提としたものであり基地機能強化につながる、反対派への公権力からの排除活動が暴力的なものであった、などを理由に、記事全体に否定的な論調が織り込まれていた。確かに反対する理由は納得できるものである。また、火に油を注ぐかのような「土人」発言も、このヘリパッドの新設工事を巡って、反対派と機動隊の攻防の過程で発せられたものだった。だが、しかし、である。少しは前向きな、建設的な情報も、併記されていてもいいのではないか、と思うのである。例えば、本土復帰以来最大規模となった返還地域とはどのような地域なのか。基地内の手つかずの自然には観光資源や農耕地としての将来性は無いのか。国や県、地権者は、返還された地域をどのように活用する予定なのか、などといった未来志向の記事も読みたかったのだ。

米軍の沖縄駐留は、外交と軍事の分野の問題であり、これらの分野は国の専管事項とされている。そのため、在沖米軍やアメリカ政府は、地元の地方自治体や沖縄県民よりも、日本政府や日本全体の世論に目を向ける傾向があるようだ。沖縄からすれば、日米両政府から基地問題などで無視された形になり、実際に不利益を被る地元を素通りして頭ごなしに物事が決められていくという、強い不公平感を抱くのも、もっともなことだ。その感情が基底にあるために、本日付の「米軍艦、海に汚水」のような、「アンチ米軍」、「アンチ米軍基地」の報道が優先される。ただこのような沖縄の状況は、本土の「ネトウヨ」が抱く「ヘイト沖縄」、「ヘイト左翼」の感情に、炎上するための燃料を供給してしまうという側面がある。

「ネトウヨ」の言説をそのまま映像化したような底の浅い番組も現れた。TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)が1月2日に放映した、番組「ニュース女子」の高江ヘリパッド建設反対運動を採りあげた回である。事実にもとづかず、十分な取材も行っていなかったこの番組については、反米軍基地の運動家だけでなく、2県紙は無論のこと、本土の良心的なジャーナリストからも批判が出ている。この番組を見て私は、「アンチ」が「ヘイト」を生み出しているという印象を強くした。「ヘイト」は言論による暴力であり、決して許されることではない。そして県紙が在沖米軍基地について、ネガティブな「アンチ」となる内容であっても事実であれば臆することなく正しく伝えるということは地域社会から必要とされる重要で正当な役割ではある。だが県紙には、在沖米軍に限らずあらゆる事象について、「アンチ」だけで終わってしまうのではなく、多元的な立ち位置を許容する前向きな議論の場としての役割も期待したい。

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