沖縄における「商圏」の距離感について

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沖縄における商圏

沖縄における「商圏」の距離感について

沖縄本島におけるパチンコ市場の各「商圏」が持つ距離感について考えてみたい。

パチンコホールについてマーケティング的な見方をする場合、商圏の設定が欠かせない。だが、沖縄に限らず全国どこであっても、このファーストステップが容易ではない。そしてこのファーストステップで誤ると、その後の立論すべてが無駄となる。

沖縄社会は、車に依存した社会である。そのため沖縄で商圏を設定する際には、自動車での移動を前提として考える必要がある。沖縄では、第二次大戦後から2003年に那覇都市モノレール「ゆいレール」が開通するまでの半世紀以上、車以外の公共交通機関が存在しなかった。また1945年から1972年までのアメリカ軍政府による統治は、アメリカ社会の「自動車文化」を沖縄に浸透させた。このアメリカ社会の「自動車文化」とは、日常の移動手段として自動車を過度に重視し、生活パターンにおいて大きく依存する文化(行動様式)を意味している。例えば、多くの沖縄本島の人たちにとって、徒歩10分の距離は車での移動が必要な距離となる。雨の日には、小学生の児童を車で送迎することが必要だと考える親も多い。従って、本土の人からすれば、ごく短い移動距離であっても車が頻繁に使用されているという印象を受ける。直進で長く走行する車は少数派で、びっくりするような細い路地を頻繁に出入りする車が多い。

沖縄本島の面積は、日本の都道府県で最小の香川県(約1877平方キロ)よりも狭い1208平方キロである。ただ、本州、北海道、九州、四国以外の島としては日本最大の面積を擁する。とはいえ本島の人口は那覇市を中心に、南は糸満市、北は沖縄市までの中南部に密集している。主要都市間の距離は、那覇市から南部の中心部である糸満市まで12.5キロ、中部の中心部である沖縄市(コザ)までは約27キロ。本土の感覚では、それほど遠いとは感じない距離である。だが、本土の感覚では徒歩圏内とも思える短距離での移動が中心となる沖縄では、那覇市から沖縄市は、かなりの「遠征」として受け止められているようだ。

沖縄本島では平地は限られていて坂が多く、細い生活道路が入り組んでいる。2車線以上の幹線道路はごく限られていて、片側1車線の道路がほとんどだ。そして頻繁に右左折する。そのため、ほとんどの道路では渋滞が慢性化することになる。

広大な平原に住民がまばらに点在するアメリカと、島社会の沖縄では、地勢がまったく異なる。そのため、アメリカの自動車文化を沖縄に持ち込んで移植するという軍政府の方針には、そもそも無理があったとしか思えない。だが沖縄での車への依存はすでに文化として定着しており、いまさら一朝一夕に変化するとは想像できない。

沖縄でも、特に那覇の渋滞は全国で最悪だという調査結果がある。内閣府の沖縄総合事務局は2012年度のカーナビ情報から得たビッグデータを分析して析出した。それによれば、那覇市内一般道の平日混雑時(午前7時~8時台と午後6時~7時台)の平均速度は時速16.9キロ。全国の主要都市でもっとも遅い。県内の自動車保有台数は、2012年3月31日現在の人口142.3万人に対して、2013年3月31日現在で102.6万台。およそ県内全人口の4人に3人が自動車を保有しているということになる。ちなみに筆者の通勤時の平均移動速度は、時速に換算すると11.6キロである。

慢性的な渋滞事情を考えれば、沖縄におけるパチンコの商圏は、当然ながら本土の自動車商圏よりも狭く想定するべきである。車の「15分商圏(15分で移動可能な距離)」は沖縄では、直線距離ではなく道路の移動距離で4~5キロの圏内となる。直線距離で円を描けば、15分商圏は半径3キロ圏内となりそうだ。直線距離で6キロ離れた隣接商圏への移動は車で30分かかると考えるべきであり、遊技客にとっては相当ハードルが高い。隣の都市への移動には、料金のかかる高速道路(沖縄自動車道)を使わない限り、1時間前後かかると考えた方がよさそうだ。

本土では特に都市部において自動車商圏と並んで、あるいはそれ以上に重要になる駅前商圏について、沖縄では考慮する必要はないと言っていい。というのも、通勤でのモノレールの利用者数はごく限られているからである。例えば、2016年度のモノレール各駅の1日あたり平均乗客数は、もっとも多い県庁前駅で6370人、もっとも少ない市立病院前駅では838人である。近年、モノレールの利用者数は上昇する傾向にあるが、これは沖縄を訪れる旅行客の増加にともなったものであり、旅の目的地として想定されにくいパチンコホールに影響を及ぼす要因になるとは、少なくとも現時点においては考えにくい。

ただし沖縄では、社会的な概念としての「シマ」を無視することはできないだろう。これは、人間関係が濃密な沖縄に特有の概念である。「シマ」は、アイランド・離島の「島」という意味ももちろんあるが、地域社会・村落共同体という意味もある。性格的には、本土で「ムラ(村)社会」と言う際の「ムラ」に相当する。また補足ながら、泡盛も「シマ酒(島酒)」、または単に「シマ」と呼ばれている。これは地理的な概念と言うよりも社会的あるいは心理的な概念だ。発話者が属するとみなして忠誠心を捧げることを期待される社会関係が「シマ」である。そのため地縁だけでなく血縁や社縁(仕事上での人間関係)ともリンクする。本土よりも「島国」という言葉がふさわしい沖縄では、自分の属する「シマ」から疎外されることや絶縁されることが、強くおそれられている。そのためパチンコという行為であっても、「シマ」的な人間関係と何らかの形でリンクした場合にそのパチンコホールは絶対的な店舗を選考する際の対象となり、地理的な距離はしばしば無視される。沖縄においては、地理的な「商圏」と同様に、あるいはそれ以上に、社会的なネットワークによる「商圏」を構築していくことが重要になる。沖縄社会に根差すということは、重層的な「シマ」のネットワークにリンクしていくということを意味しているのである。ここに、沖縄でパチンコホールを営業するということの難しさと醍醐味はありそうだ。

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