現時点におけるパチスロに関する「ややこしさ」の整理

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現時点におけるパチスロに関する「ややこしさ」の整理

更新日:2017年5月24日

パチスロが「ややこしい」状況になっている。本稿では、現時点におけるパチスロを取り巻く環境について、その絡まった紐を解きほぐして整理しておこうと思う。パチスロをめぐる「ややこしさ」には、①相次いだ基準の変更、②「新基準に該当しない遊技機」および「高射幸性遊技機」という2つのカテゴリーの併存とその運用、③警察庁による対象機種の早期撤去要求の正当性、以上の3点がある。

パチスロを巡る環境をややこしくしている要因にはまず、ATタイプおよびARTタイプについての性能基準が、2014年から2016年までの3年間に何度も改訂されてきたことがある。それぞれの改訂では、改訂前の「旧基準機」を新台設置することのできる期日が定められてきた。付随的な細かな改訂も多いが、ここではそれぞれの改訂で主眼とされ変更された性能基準に絞って記述する。

現在ホール(パチンコホール)に設置されているATタイプおよびARTタイプのパチスロは大きく、①旧基準機、②5.5号機、③5.9号機に分けられる。単純化すれば、「旧基準機」はサブ基板による出玉制御機能を搭載したパチスロ、「5.5号機」はメイン基板のみによる出玉制御のパチスロ、「5.9号機」は役比モニタを搭載したパチスロ、ということになる。幾度にもわたって出玉性能を落とす(射幸性を落とす)基準の改訂も行われてはいるのだが、旧基準機と5.5号機を画す最大の相違点は、出玉性能であるよりもサブ基板によって出玉性能が行われているか否かであり、5.9号機であることを満たす最大の必要条件は、こちらも出玉性能であるよりも役比モニタの方にあると言える、

2014年の夏以降にパチスロでは計4回、大きな基準の改訂が行われた。時系列に沿って変更内容を列挙してみよう。1回目が、2014年8月に発表された、翌9月からの型式試験の基準変更である。出玉の下限値を55%以上とするというものである。ATタイプやARTタイプでは、有利区間(ATおよびART中)に押し順の指示機能が作動し、その指示に従うことによって出玉を増やすことが可能となる(押し順を無視すれば出玉は増えない)。基準変更前には、公安委員会からの検定を受けるために必要な型式試験において指示機能の指示に従って出玉性能(試射)の試験が行われていたのだが、基準の変更後には指示期間中であっても任意の押し順で試験が行われるようになった。そのような打ち方でも使用したコインの55%以上の出玉を得ることができることが、新たに基準となったのだ。型式試験は保安通信協会(保通協)という、公安委員会より指定受けた試験機関によって行われていることから、試験基準の変更は警察庁の意向によるものであると言える。この「ペナルティ方式の変更」と呼ばれていた基準変更が意味するところは、通常時のベースアップと、その結果としての有利区間中の出玉量の減少である。この基準の変更と同時期に、旧基準機の新台設置が2015年の11月末までとすることが定められている。

翌9月、パチスロメーカーの業界団体である日電協は日工組とともに記者会見を行い、サブ基板(周辺基板)によって出玉制御が行われている機種の新台設置を、出玉下限値55%以上への基準変更と同時期の2015年11月までとする自主規制(内規)を決定したと伝えた。これが2回目の基準変更である。これは自主規制ではあるが、警察庁の意向を反映している。同じ2015年11月末を設置期限とするペナルティ方式の変更と、サブ基板による出玉制御の禁止は、セットにされて説明され、当時の業界誌(紙)による報道においては、ペナルティ方式の変更の方が出玉を制御する基板の変更よりも強調される傾向があった。だが、後述する2017年3月の国会における議員質問で明らかになるように、問題の重大性が水際だっていくのはサブ基板制御の方である。また、出玉制御のサブ基板からメイン基板への変更は極めて重要なものであったことから、変更以降のパチスロを特に「5.5号機」と呼ぶようにすることが業界団体よりアナウンスされた。2005年にパチスロが5号機の時代に入ってから、コンマ以下の区切りが使用されるのは初めてのことであった。

3回目の変更は、2015年7月に発表された。この変更以前の機種の新台設置期限は、2016年7月末までとされている。変更内容は、傾斜値(1ゲームあたりの純増枚数期待値)2.0枚未満、入賞Sim出玉率(内部成立役がすべて入賞したと仮定した場合における出玉率)1.0枚未満とするというものである。この変更以前には、純増2.0枚以上(最大3.0枚)を実現するにはATタイプである必要があった。だがこの基準変更によって実質的にATタイプでの設計が不可能となり、変更以降のパチスロはARTタイプに限定されることになった。この変更の目的は当然ながら、出玉増加スピードの制限、すなわち「射幸性の抑制」にある。この変更も自主規制である。

4回目の変更は、2016年6月に発表され、2017年9月を仕様変更以前の機種の新台設置の期限としたものである。変更の要点は、有利区間を最大1500ゲームとしたこと、そして役比モニタの搭載を義務づけたことである。この基準変更以降のパチスロが「5.9号機」となる。役比モニタとは、役物比率(払い出し総数に占めるボーナスによる払い出しの比率)と、通常時に対する有利区間(ART区間)の占有比率を7セグで示すものである。違法な改造が行われておらず、内部的にも設計値に沿った挙動を示していることを、稼働中にもわかりやすく外部表示するための機能である。この機能が搭載された理由としては、設置後の違法な改造を防止するというだけではなく、ホールへの稼働開始後の時間経過によって出玉性能が変化するという、「アイス」(固形物から時間の経過とともに液体に変化する)とも呼ばれた“タイマー機能”がメーカーによって搭載されていないことをわかりやすく示すという狙いもある。一方、有利区間最大1500ゲームという基準は、ARTのみで出玉を増やすタイプで1ゲームあたりの純増枚数を2.0枚とすれば、1度のARTで最大3000枚の出玉リミット(制限)を課すということであり、獲得出玉の「総量規制」と言える。コイン3000枚は、1枚20円貸しでの等価交換(換金時にも1枚20円で交換できる)では6万円となる。「1撃6万円」が最大出玉の目安として示されたということになり、この目安はパチンコの設計にも影響を与えることになる。

4回の変更は、1回目と2回目がたてつづけに2014年に、3回目が2015年に、4回目が2016年に行われており、ほぼ1年に1度のペースで行われていたことがわかる。2014年の1回目と2回目の基準変更は、サブ基板による出玉制御という、出玉設計の“違法性”に関わるものであっただけに重要だ。パチンコがいわゆる「遊技くぎ」問題(「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」問題)の渦中にあった2015年から2016年にかけては、出玉性能を制限する「射幸性」の抑制が基準変更の主眼となるが、役比モニタの搭載には“タイマー機能”が搭載されていないことを示すことも狙いとなった。

ここまでの基準変更の動きは、メーカー(製造者)側の動きである。性能についてだけでなく、旧基準機の販売期限についても、自主的に制限している。だが、ホール側の使用期限を定めたものとはなっていない。遊技機は、公安委員会の検定通過日から3年間の検定期間が保証されており、通常の場合、所轄警察署の認定を受ければ(再認定)、さらに3年間の設置が可能となり、検定期間終了後にも「みなし機」として使用しつづけることが黙認されてきた。2014年に検定を通過した遊技機であれば、「みなし機」としての使用を排除しても、最大で2020年まで使用しつづけることができるはずである。

だが、世論による批判的な論調の強まりを受けて2015年6月、ホールの業界団体である全日遊連は全国理事会において、「新基準に該当しない回胴式遊技機(パチスロ)」のホールへの設置比率の数値目標を定めた。2016年の12月1日までに50%以下に、2017年の12月1日までに30%以下にするというものである。2016年10月になって「新基準に該当しない回胴式遊技機」の具体的な機種名(型式名)を列挙したリストを発表した。最初の目標期間が経過した2017年2月には、業界団体によって構成される中古機流通協議会が、「新基準に該当しない回胴式遊技機」の設置比率が50%を超えているホールには、中古機の流通を制限することを取り決めた。中古機を導入できなければ、ホールの運営が極めて厳しくなる。業界団体による自主的な“制裁”である。

さらにパチンコ業界は2015年9月末、一部のパチンコとパチスロを「高射幸性遊技機」と位置づけ、自主的に設置比率を落としていくことを取り決めた。この「高射幸性遊技機」には、パチンコ61機種(型式)、パチスロ65機種(型式)が指定された。このリストへの掲載機種(型式)は随時、追加されていった。ただ、この「高射幸性遊技機」については、設置比率の削減目標も、業界での自主的な“制裁”も取り決められていない。「新基準に該当しない回胴式遊技機」とパチスロの「高射幸性遊技機」のリストは、多くの機種(型式)で重複しているが、完全には一致していない。

現在のパチスロにおける「ややこしさ」は、旧基準機、5.5号機、そして5.9号機という、大きく分けて3つの基準のパチスロがホールに併存していることがまずあり、次に「新基準に該当しない回胴式遊技機」と「高射幸性遊技機」という2つの区分を設けて設置比率を減らそうとしていることがある。ただし、基準の変更にしても設置比率の削減目標にしても、少なくとも表面的には、型式試験の基準変更を除いて、業界団体による自主規制であるという体裁を採っており、法的な拘束力を持っていない。取り決めに違反して旧基準機を設置しつづけたとしても、課される“制裁”あるいは“罰則”は、中古遊技機の流通の制限のみであり、警察・公安委員会による営業停止や営業許可の取り消しといった強権は発動されない。パチンコの「遊技くぎ」問題の際には、廃業を予定していたホールが対象機種の撤去期限を守らないというケースが発生しており、業界団体は対応に苦慮したという経験を持つ。

第3の「ややこしさ」を指摘するとすれば、この点にある。すなわち、設計基準の変更にせよ、旧基準機とされた機種の撤去にせよ、基本的にはメーカーやホールの自主性に委ねられており、警察庁による監督や行政指導が法的な拘束力を持たないということが、事態の推移をさらに「ややこしい」ものとしているのである。遊技機を強制的に撤去させるには、検定の取り消しか、あるいは遊技機の性能基準について定めた国家公安委員会規則の改訂を行うしかない。ただし前者は、保通協による型式試験を通過し、公安委員会による遊技機の認定と型式の検定を受けるという、公安委員会規則に則って適法性を担保された遊技機について、後から検定を取り消して違法な状態にするのであり、「警察が自ら過去の瑕疵を認めた」という見方を許すことになりかねない。また後者では、一定の移行期間が設けられるにしてもその移行期間が過ぎれば、新たな公安委員会規則にそぐわない旧規則下でつくられた遊技機は直ちに違法な状態となることから、ホール業界に大きなダメージを与えることになってしまう。パチスロでは、現在の5号機から6号機に移行することになり、5号機はそのすべてが撤去対象となる。役比モニタの付いた「5.9号機」という呼び方からは、6号機への移行が目前にあるという業界の意識を読み取ることができるだろう。

本年3月8日、民進党の高井崇志議員が衆議院内閣委員会において、サブ基板(周辺基板)で出玉制御を行うパチスロ旧基準機の適法性について質問を行っている。高井議員の「サブ基板で性能を制御されているパチスロ遊技機については、そもそもこの認定を認めるべきではないのではないでしょうか」という質問に対して、政府参考人として出席した警察庁生活安全局の山下史雄局長は「遊技機の周辺基板が遊技の結果に影響を及ぼす機能を有するものについては、風営適正化法施行規則第八条に定める『著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準』に該当することから、同基準に該当しない旨の都道府県公安委員会の認定を受けることはできないと考えられる」と答えている。この国会質問があったことから、業界内では警察庁・国家公安委員会が規則の改正に踏み切るのも時間の問題だという観測が流れていた。ホール業界による機種評価を計る指標として機能する中古機の流通市場では、高い稼働実績により高値を維持していた「新基準に該当しない回胴式遊技機」の取引価格が落ち込み、その代替機種として想定される新基準機の価格が値上がりしたのである。6号機への移行スケジュールがそろそろ示されるという見通しのもと、その準備に動き始めたホールが多くなっていたのである。

5月9日、警察庁の担当官は6団体の代表者を呼び、「新基準に該当しない遊技機」および「高射幸性遊技機」に関する“指導”を行った。その翌日に全日遊連が傘下組合員に発出した「警察庁訪問メモ」によれば、「新基準に該当しない遊技機」および「高射幸性遊技機」の撤去が進展するよう6団体で再度検討し、検討結果の報告を求めた。「メモ」に記載された検討すべき2点について、以下に引用する。

「ぱちんこへの依存防止対策が喫緊の課題になるなど、ぱちんこを取り巻く環境は急激に変化しているにもかかわらず、新基準に該当しない遊技機の設置比率の目標値は2年前に定めたものでいいのか。」

「高射幸性遊技機については、これらの遊技機の削減が進まないのであれば、削減の目標値を設定する必要はないのか。」

この“指導”に対する業界からの評価は、関係者への個人的なヒアリングによれば、一言で言えば「緩い」というものであり、その実効性を疑問視する意見が大勢を占めていた。まず、撤去が推奨されているパチスロを強制的に撤去させるための“指導”に法的な実効性を持たせるためには、前述の通り、対象機種の検定を取り消すか、規則を改訂するしかない。ちなみに「遊技くぎ」の問題では、メーカーからホールに出荷された時点ですでに、メーカーによって検定時とは異なる状態の釘に不正に改変されており、そのままホールで稼働させると違法な状態になっていたことから、2年間をかけてホールに設置されているパチンコのうち「MAX(マックス)タイプ」と呼ばれていたタイプを中心に約73万台が撤去された。だがパチスロの場合、現状ではパチスロの「新基準に該当しない遊技機」と「高射幸性遊技機」は適法な状態にあり、ホールは業界の取り決め以外に、早急に撤去すべき正当な理由を持たない。また、警察庁が6団体で協議することを求めているが、これまでの通例では、メーカーとホールという立場を越えた業界間での合意形成には時間がかかっており、パチンコ業界の政策決定の速度が、IR・カジノ導入の前提となる依存問題対策に急ぐ現在の政治環境の変化の早さに対応できるとは思えない。

パチンコ・パチスロが「身近な大衆娯楽」を目指すのであれば、パチンコ・パチスロのゲーム性と、ホールでの遊び方の双方において、できるだけシンプルである必要があるだろう。「遊び方がわからない」、「勝ち方がわからない」ということが、パチンコ・パチスロから客を遠ざける要因のひとつとなっている。だが現在のパチスロをめぐる状況は、①相次いだ基準の変更、②「新基準に該当しない遊技機」および「高射幸性遊技機」という2つのカテゴリーの併存とその運用、③警察庁が対象機種の早期撤去を求める正当性という、事態をさらに「ややこしく」する3つの要因を抱えている。事態を打開することは容易ではないだろうが、パチスロが次世代にも生き延びるために業界は、これらの問題に一つひとつ丁寧に取り組み解決していくよりほかに道は無い。

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