言えないこと

規則改正に関して「言えること」と「言えないこと」

投稿日:

更新日:2017年7月4日

月刊のパチンコ業界誌の7月号が5、6冊、届いた。このなかに、規則改正に関して触れている記事は掲載されていなかった。その話題に触れることを、どの雑誌でも避けているのだ。一方、インターネット上のSNSやブログでは、具体的な改正の内容にまで踏み込んだつぶやきや記事も散見されており、うまく検索すればパチンコ業界で何が進行しているのか、そのあらましをうかがい知ることができそうだ。規則改正に関して業界内に「言えること」と「言えないこと」についてのコード、あるいは共通認識が存在している。紙媒体の署名記事ではその縛りは比較的強く、インターネット上の匿名記事では緩い。規則改正をめぐって7月上旬の現時点で、業界はどのような状況にあるのか。2017年の上半期を振り返りながら概観してみよう。この上半期には、3月31日、5月9日、6月19日という、大きな節目として業界史に刻まれることになる3つの日付が存在した。


パチンコ業界は2015年と2016年の丸2年間を、「遊技くぎ」問題、あるいは「検定機と性能が異なる可能性のある遊技機」問題に費やした。この問題へ無事に幕引きがなされようとしていた2016年の年末、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に関する整備推進を定めた「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(通称「IR推進法」)が突然成立した。この法案の審議過程で課された附帯決議に、「ギャンブル等依存症」への抜本的な対策強化と体制の整備が明記された。主にパチンコ・パチスロが、日本に大量の「ギャンブル依存症」患者をすでに発生させており、その対策がカジノの整備よりも政策の順位としては先であるとする決議である。こうして、2017年にパチンコ業界がこの「ギャンブル等依存症」対策の強化を最優先課題として掲げて動かなくてはならないという状況が政治的に用意された。

政府は2017年3月31日、「ギャンブル等依存症」への具体的な対策を立案するため、各「ギャンブル等」ごとに「現状」と「課題」を取りまとめた「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」と題するレポートを公表した。ここには、日本における既存の、すなわちカジノ以前の「ギャンブル等」として、「ぱちんこ」(パチンコ・パチスロの遊技産業)と、競馬、競輪・オートレース、モーターボートといった公営競技が列挙されており、現状におけるそれぞれの「依存症」対策に関する政府の認識が示されている。「ぱちんこ」については8項目が挙げられており、このなかには「出玉規制の基準等の見直し」と「出玉情報等を容易に監視できる遊技機の開発・導入」といった遊技機の性能に関する項目も含まれていた。このレポートの内容から、パチンコ産業の存立を担保し、所管・規制する「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(通称「風営法」)の施行規則の改正が近々、行われるのではないかと予見する業界関係者は多かった。

2017年上半期のパチンコ業界における次の大きな出来事は5月9日に起こった。パチンコ業界の主要6団体(全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商)の代表者が、警察庁のパチンコ産業担当官から招集を受け、「新基準に該当しない可能性のある遊技機」および「高射幸性遊技機」の撤去スケジュールを見直すよう指導を受けたのである。パチンコについては、2016年の年末までに、いわゆる「マックス(MAX)タイプ」と呼ばれる「射幸性」が高いとされるタイプについての撤去をほぼ終えていたため、この指導はパチスロについてのものであると業界側には理解された。パチスロの「新基準に該当しない可能性のある遊技機」については2017年の年末までに、取り決めを定めた時点の30%にまでホールの設置台数を減らすことを業界団体はすでに合意していた。「高射幸性遊技機」については、具体的な数値目標をともなった取り決めではないものの、業界を挙げてできる限り早く撤去することを合意していた。だが5月9日の指導では、「新基準に該当しない可能性のある遊技機」については、業界側の目標値が2015年9月の約2年前に取り決められたものであることから前倒しの方向で見直すことを、また「高射幸性遊技機」についてはこれまで定められていなかった目標値を設定することを、業界は示唆された。ただこの指導では、指導に強制力を持たせるような罰則規定や法的根拠が示されず、また具体的な時期や目標値が示されなかったこともあり、業界側からはっきりと指導を首肯し推進していくという回答を出すことをしていなかった。

「新基準に該当しない可能性のある遊技」と「高射幸性遊技機」の早期撤去の時期や数値目標について、ホール団体の全日遊連とパチスロメーカー団体の日電協が当事者として折衝を行ったが、入替にあたって何らかの補償を求める全日遊連と、補償の必要性を感じていない日電協で折り合いがつくはずもなく、無為に時間が過ぎていった。2017年上半期におけるパチンコ業界にとっての次のターニングポイントとなった日付は、パチスロ撤去に関する指導がなされてから約40日後の6月19日である。この直前の同月13日には、自民党と公明党の政府与党が会期末直前の193回通常国会に「ギャンブル等依存症対策基本法案」を提出し、次の国会での継続審議となることが決定している。加計学園問題といわゆる「共謀罪」法によって通常国会は紛糾のなかで幕引きとなり、7月2日には都議選が予定されていたことから、夏から秋にかけての政局について、方向性を見通せるようになった時期である。この日に警察庁担当官からの招集を受けた6団体の代表者は、「風営法(風営適正化法)」施行規則の改正について概要の説明を受けた。規則とは、法律運用の細則を定めたものである。法律の改正には国会での審議が求められるが、規則の改正については所管省庁が任意に実施することができる。とはいえ当然ながら、規則も法体系の一部に含まれているため、違反すれば罰則の対象となり得る。

ホールは遊技機を、型式の検定と公安委員会による認定を遊技機が受けてから3年間、使用することができる。現行では、再び認定を受ければ、すなわち再認定を受ければ、さらに3年間の使用が認められている。さらに、最初の認定の3年間と次の再認定の3年間、計6年間を過ぎても使用を継続することが黙認されてきたという経緯があり、そのような遊技機は、いわゆる「みなし機」と呼ばれている。遊技機に関する規則が改正されれば、ホールで大量に設置されている旧規則下の「みなし機」の使用が認められなくなることは十分に予測される事態である。警察庁は、ホールから撤去したいと望む性能の機種・型式を新しい規則で不適合とすれば、法的な手続きに則って、一掃することができるのである。

6月19日の警察庁による説明では、規則の改正を予定していること、そして2017年の「夏頃」に改正に関して意見・情報・改善案などを広く社会から求めるパブリックコメントを実施すること、改正規則の施行は「来年の早い段階」となる予定であることが示された。またこの時、警察庁はパチンコ業界から規則改正について、要望と質問を同月30日まで受け付けることを伝えた。全日遊連は以上の過程を、19日発出の文書、23日開催の全国理事会、さらに7月3日発出の文書で、傘下の組合員に報告している。ここまでが現段階で「言えること」となるのだろう。

警察庁から業界団体の代表者に規則改正に関して説明のあった6月19日、パチンコ業界14団体の連絡協議体であるパチンコ・パチスロ産業21世紀会(略称「21世紀会」)の代表も務める全日遊連の阿部恭久理事長は、21世紀会代表の肩書で、同日の警察庁による説明に参加した全日遊連以外の5団体(日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商)に対し、「行政当局からの要請について」と題した文書を発出している。これは、「行政当局から公表を控えるよう要請のあった事項」については「保秘の徹底」を要請する内容であった。全日遊連・理事長の肩書で発出した同日付の文書では、規則改正の説明を受けたこととそのおおよその時期について傘下の組合員に文書によって説明していることから、「行政当局から公表を控えるよう要請のあった事項」、すなわち「言えないこと」とは、規則改正そのものではなく、その具体的な内容であったと推測できる。ただ紙媒体の業界ローカルメディアは、印刷に間に合わなかったのか、あるいは警察庁と業界団体の意向を忖度したのか、規則改正そのものについても、7月号では言及していない。業界外部のメディアであるハーバー・ビジネス・オンラインが、7月1日付の記事として「警察庁がパチンコ改正案を検討。出玉と景品の上限を引き下げる見通し」(https://hbol.jp/144522)を発表しており、この記事が改正案の内容にまで踏み込んだ商業記事としては初出であったと思われる。


パチンコ業界は基本的に「指示待ち」の構えである。「お上」の指示を待って、それに従う。「下々(しもじも)」が「お上」に提案するようなことはほとんどしてこなかったし、「下々」の間で自由な議論もほとんど行われてこなかった。今度の規則改正では、どのような経緯をたどるのだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

four + seven =