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2016年のパチンコ業界を振り返る

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となりのギャンブリング 第1回

2016年のパチンコ業界を振り返る

パチンコ業界にとって2016年は、いや2016年も、激動の1年でした。最近、パチンコ業界についての各種まとめサイトのタイトルでよく使われるフレーズが「激震」。業界は「激震」に何度も襲われ、「パチンコ業界はよく震えているな」と揶揄されました。

最大のトピックは、昨年から2年越しですすんだ「遊技くぎ」問題が、「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」を回収撤去するという落としどころで一応の決着をみたということでしょう。この問題についての解説は長くなりそうなので端折りますが、結果的には2016年の1年間で約73万台のパチンコを、遊技機メーカーではなくパチンコホールの負担によって入れ替えることになりました。警察庁の統計では、全国のパチンコ設置台数は約291万台なので、撤去対象とされた台数は、全体のおよそ4分の1となります。この「遊技くぎ」問題は、2015年の年初よりパチンコ産業を所管する警察庁により問題化され、強力な指導のもとで2016年中での幕引きが図られたのです。釘問題では、パチンコホールによる利益調整のための、いわゆる「釘調整」をどう処理するのか、まだ問題は残っています。ですが、メーカーによる出荷時の違法状態は、責任を問わない事後処理という格好ではありましたが、一応の問題決着を図っています。

第3次撤去対象機種リストには計73万台の撤去対象機種のうち、約59万台が含まれていました。そのリストの発表が6月。そして撤去期限が12月末でした。発表から撤去の実施までわずか半年の間に約59万台も撤去しなくてはならないとは、これまでにも激動の危機的な状況をくぐり抜けてきたパチンコ業界でも前例がありません。また負担が遊技機メーカーではなくパチンコホールへと重くのしかかったため、本来は車の両輪として連動しながらパチンコ産業を盛り上げていくべき両者の間に、心理的な距離が拡がりました。何より大きな影響は、パチンコ産業からの客離れの加速です。

パチンコホールの経営状況が悪化すると、顧客への還元率が圧迫されます。また撤去対象機種には「高射幸性遊技機」の問題として別立てで議論されていた「マックスタイプ」と呼ばれるパチンコが選ばれたため、これらの機種が撤去されれば、ヘビーユーザー化が進んでいわゆる「射幸性」の高い機種ばかりを好むようになったファン層からの支持をパチンコ産業は失うことになりかねません。パチンコ業界のここ数年のトレンドは、もちろん業界関係者の本意ではないのでしょうが結果的には「脱大衆化」となっています。パチンコ産業はこれからどこに向かおうとしているのでしょうか。業界は顧客層として具体的にはどのような人たちを想定しているのでしょうか。2016年末の現段階では残念ながら、その像を結びません。

パチンコの釘問題は、パチンコ産業をグレーゾーン化させていた主要な2つの要因のうちのひとつで、もうひとつの要因が換金問題です。こちらにも2016年11月中に大きな進展がありました。衆議院の緒方林太郎議員が質問書を提出し、政府が回答したのです。政府は換金について、「客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該商品を売却することもあると承知している」と答弁しました。さらに同議員が同月中に提出した換金行為に対する再質問に対して政府は、「ぱちんこ屋の営業者以外の第三者が、ぱちんこ屋の営業者がその営業に関し客に提供した賞品を買い取ることは、直ちに風営法第二十三条第一項第二号(遊技場営業者の禁止行為とされる賞品としての現金の提供)違反となるものではない」と回答しました。その2年前の2014年、自民党の会議に出席した警察庁の担当官が換金行為について「まったく存じ上げないこと」と発言して話題になっていたことと比べれば、この問題でも事態は急速に進展したと言えるでしょう。

釘問題にせよ換金問題にせよ、深く立ち込めていた霧が強く吹いた風によって流されていくように突然クリアになったのは、これまで棚上げされていた「特定複合観光施設区域の整備の吸神に関する法律案」(通称「IR推進法案」あるいは「カジノ推進法案」)についての国会審議が11月末に開始されたことと無関係ではないでしょう。これまで慎重姿勢を貫いてきた公明党が容認(実際には各議員の自主投票)に転じたことにより、成立の目が出てきました。自ら海の飛び込むレミングのように、「射幸性」を高めファンを減らしつづけてきたパチンコ産業でしたが、日本へのカジノ導入という大きな外圧によって、根本的な方向転換を迫られているように思います。ただ、グレーな存在であることや、「射幸性を高める」というこれまでの方向性を否定された後、パチンコ産業はどこに向かうことになるのでしょうか。

カジノ法案の審議で、パチンコ産業が批判の矢面に立たされました。カジノはギャンブル依存症を生む。日本にはすでにギャンブル依存症(の疑いのある人)が536万人もいる。既存のギャンブル依存症患者のほとんどを生み出したのはパチンコだ。まずもってパチンコが悪い、という論法です。パチンコ産業にはいくつもの「脇の弱さ」がありましたが、法メーカー出荷時の釘問題という法的な弱さと、換金が政治的に未承認であるという政治的な弱さをクリアして、残った問題がいわゆる「依存症」の問題でした。536万人という数字には、発表した厚生労働省の政治的思惑や、レポートを出したとされる精神医療界が一枚板ではなく見解が分かれているという背景があるようですが、パチンコ産業はカジノ議論が始まるまでに対策が万全に行われているということを社会にアピールできるよう準備しておくべきでした。参議院内閣委員会でのカジノ法案の12月13日付付帯決議を見ると、10項目に「カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組・体制を設けるとともに、関係省庁が十分連携して包括な取組を構築し、強化すること」と定められています。この付帯決議が2017年に議論・制定される「IR実施法案」あるいは「カジノ実施法案」の方向性を定めた叩き台になると思われます。ここに出てくる「他のギャンブル・遊技等」、特に「遊技」とは主にパチンコ産業を指します。つまりこれまで警察庁のみを所管官庁として戴いていたパチンコ産業ははじめて、「依存症対策」を入口として、おそらくは厚生労働省など「関係省庁」の指導・介入を招くことになるのです。現在の体制で物事を動かすことができるうちに、つまり「依存症対策」の骨子が固まるまでに、パチンコ産業はこの問題への対応についてイニシアティブを取りに行く必要があるでしょう。パチンコ産業は、「警察庁は、『身内』として親身に指導していたなあ」とこれまでの歴史を懐かしく振り返る時が来るのかもしれません。

2017年はパチンコ産業にとって、大げさにではなく、その存亡を賭けた1年となりそうです。

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